一級建築士資格独学散歩道

一級建築士資格取得までの道のりを散文的に綴ります。

4.製図試験に体力が必要、は本当だった

2015年8月4日の日記

 本試験終了の翌週の土日に、製図の練習をしてみた。仕事として線を引いたのはとうの大昔、1990年代前である。どのくらいあの感覚を覚えているのか、すこしワクワクしながら、トレペをセットする。実は、平行定規を使うのは、学生時代に製図を習って以来である。当時は平行定規ではなくT定規を使っていた。会社ではアーム式のドラフターである。

 

  用意したのは、コクヨの平行定規付き製図板、バンコーのテンプレート付き三角定規、そして、お手本は『一級建築士製図対策室』に掲載されているサンプル図を使う。

 トレーシングペーパーがセットされた製図板を前にして、ふと思考が止まる。私は商業施設の内装設計を仕事しにしていたので、躯体図面の描き方は要領を得ていないと、今更気付いた。そうだ、まずは図面のレイアウトである。敷地および1階平面、そして、二階平面、梁伏図、立面図の4つがうまくレイアウトされる必要がある。サンプル図がない状態からレイアウトを決める時、どのように各図を配置するべきか。実際の試験でトレースを開始する時は、まずは図面レイアウトを決めなければならないわけだ。
 しかし、今回は目の前にある図面を再現するだけである。用紙の端からサンプルと同じ距離をとって、通り芯を描いていく。次に柱を描く。他の人が設計した図面をトレースするにはそれなりに時間がかかる。やがて腰が痛くなる。
 
 久々の製図であるが、やはりことはスムーズに進まない。実は、三角スケールと字消し板は購入していなかった。バンコーのテンプレート付き三角定規にはスケールが振られているので、三スケはいらないと思ったのだ。ところが、そうでもないようだ。便所などの詳細を書く時は、小さめの三スケを当てる必要がある。字消し板も必要である。この二つが無いだけで、結構効率は落ちるようだ。
 しかし、バンコーのテンプレート付き三角定規はなかなか良い。いちいちテンプレートと三角定規を取り替える手間が省ける。これは買って正解。普通の三角定規は要らない。でも勾配定規はもしかすると必要かもしれない。
バンコ 三角定規45°テンプレートプラス

バンコ 三角定規45°テンプレートプラス

 

 

 腰に負担をかけながら8時間をかけてやっと書き上げた図面を、鞄に忍ばせて会社に持っていった。会社の先輩に見てもらうためである。そして昼休みに検分してもらった。

 ちなみに、私が現在勤める会社は建設業ではなくIT系の会社である。1995年からシステムが大規模になり、サーバルームの構築やネットワーク敷設などの工事を手掛けるようになった。私と先輩は、その工事管理部署に席を置く。互いに1990年代は建設業向けのシステムを販売するSEと営業だったのだが、いろいろと変遷を経ながら、建築の知識を活かせる今の場所に行き着いたのだ。

 全て仕上げるのに約8時間を要した。会社の先輩に、そのことを話すと、
「他の人が設計した図面をトレースするには時間がかかるよ。自分で考えたプランは頭の中にあるから何も見なくてもいいが、いちいち他の図面を見ながら寸法を当たって書けば、そりゃ時間がかかるさ」
と、慰めてくれた。
先輩が図面を嘗め回したのち、まず最初に口にしたのは、柱と壁の描き方である。
「これ、柱はどうやって描いた?」
「テンプレートで描きました」
「そうか。柱と壁の突き合わせのところに線が入っているでしょう。これ普通はブロック壁の意味になるんだよね。こういうところを試験管が見るのかどうか分からないけど、普通は鉄筋コンクリートの躯体はこういう風には描かないなぁ」
そう言って、さらさらと躯体柱と壁面の図を描く。
「柱はテンプレートを使わずに、通り芯のオフセットに補助線を引いて、柱と壁が一体となるように描かないとダメだね。」
 その他に、室名などの文字は補助線を描いて高さを揃えて書く、寸法の数値にはカンマを入れる、平面と断面が矛盾しないように描く、などなど、多くのアドバイスをもらった。
 実は、図面を描いた用紙はグラフ入りのトレーシングペーパーを使ったのだが、先輩によると試験で使われる用紙は、もっと厚手の、表面が滑らかなものらしい。ペンのタッチがトレーシングペーパーとは大分違うそうだ。
 私の前職である設計事務所ではまだ図面は手描きで、主にHや2Hのシャープペンシルを使っていた。それが今回は、参考書のアドバイスの通りHBの芯で描いてみて随分と線が濃く出ると感じた。これはトレーシングペーパーによるもので、実際の試験で使われる用紙は、芯が滑って線が濃くなることは無いようだ。近いうちに専用の用紙を購入しようと思う。